平成19年11月28日、参議院本会議で労働契約法案が可決成立いたしました。
当初盛り込むことを検討されていた内容からすると、かなり後退した印象がありますが、
これまで判例に委ねられていた労働契約の基本ルールが法律となったという点に意義があるとされています。
全部で19条からなる法律であり、これまでの判例法理・解釈を集約したものであり、実務に与える影響はさほど大きくないことから、労働基準法の就業規則の効力に関する変更部分以外は早期に施行される予定です。
(公布から3ヶ月以内に施行されることになっている。)
【主な内容】
- 労働契約の成立
- 労働契約の内容と就業規則との関係
- 労働契約の内容の変更
- 就業規則による労働契約の内容の変更
- 就業規則の変更に係る手続き
- 就業規則違反の労働契約
- 出向
- 懲戒
- 解雇
- 有期労働契約 等
なお、労働契約法に対する批判で最も多いのが就業規則の変更に関する規定です。
労働契約法第9条及び第10条は以下のように規定されています。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
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要するに、労働者との合意がなければ就業規則を変更しても労働者に不利な内容に労働条件を変更することはできないのが原則だが、
合理的であれば、労働者の同意がなくても就業規則を変更することで労働条件を(労働者にとって不利な内容にでも)変更できると規定されているのです。
ただ、「合理的」かどうかの判断基準は法律上明らかになっていないため、合理的かどうかという争いとなった場合には、結局個別事案ごとに判断するしかなくこの点の争いは今後も続くのではないでしょうか。
【以下はちょっと得する!経営情報第5号で取り上げた事例ですが、
今回テーマを取り上げていますので再掲いたします。】
多数の労働者を抱える事業所においては、各労働者間の労働条件の公平と、労働条件の統一による一元的な労務管理を行うため就業規則を定めている。
労働基準法では、常時10名以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成義務が課されているが、10名未満の場合でも就業規則に準じるものを作成する方が望ましいといえる。
就業規則の法的な性質については、学者の間でも論争があるものの、合理性のある就業規則は労働契約の内容になると考えられている。
つまり、労働者を採用した場合には、採用時点での就業規則の内容が使用者とこの労働者との労働契約の内容となるということである。
就業規則は、使用者が一方的に作成し、変更できることになっているが(ただし、意見聴取をする必要はある。)、就業規則を使用者が変更することで、労働者との労働契約の内容を変更できるか、ということが今回のテーマである。
採用された時点の就業規則に、仮に1日7時間労働と規定されていたとすると、この7時間労働を内容とする労働契約が締結されたことになる。
この1日7時間労働という労働条件を、例えば1日8時間労働に使用者が変更しようとする場合には、使用者は各労働者の承諾(同意)を得て初めて、当該労働者の労働条件を変更できるというのが民法の原則である。
【最高裁判決】
新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは許されない。(S43.12.25 秋北バス事件)
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そうすると、承諾しなかった労働者の労働条件は以前のままであり、承諾した労働者の労働条件と異なることになる。(承諾した労働者は1日8時間労働、承諾しなければ1日7時間労働)
この場合、同じ事業所内に、異なる労働条件の労働者が混在することになり、一元的な労務管理が困難になると同時に、労働者間の不公平が発生してしまうことになる。
このため、仮に労働者の承諾がなかったとしても就業規則の変更に合理性があれば、その変更は有効であるとされている。
(もっとも、個別に同意を得る努力をし、労働者が納得の上で同意を得られるなら、この方がベターであることはいうまでもない。)
【最高裁判決】
労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。(S43.12.25 秋北バス事件)
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そうすると、変更に合理性があるかどうか、という点がポイントになってくる。
これについては、変更の必要性、不利益の程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する労働条件の改善状況、労働組合等との交渉経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事件に関するわが国社会における一般的状況等を総合考慮して判断されることになっている。
:「労働条件変更の判断基準」井上克樹/新日本法規」 |