平成19年11月8日、継続審議となっていた「最低賃金法」及び「労働契約法」が衆議院本会議で可決されました。自民党・公明党の与党に加え、民主党等の賛成多数で可決されたため参議院での成立も確実視されています。
【最低賃金法の改正】
現行最低賃金法は、その第1条で「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定されている。
改正により、現行第1条のうち「、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ」が削除されます。 2005年現在、年収200万円以下の給与所得者は981万人に達しており、生活保護基準以下で働く「ワーキングプア」が問題になっていた。このため、今回の改正は、賃金の最低額を保障することにより、労働者の生活の安定を図ることを主目的として行なわれたといえる。
もともと衆院に2つの対案を提出していた民主党が、与野党折衝の末、主張が反映されたとして取り下げたことから、今回の改正は基本的に政府提出案に沿ったものとなっている。
主な改正点は以下のとおり(成立前提で「された。」と表記します。)
1. 地域別最低賃金の義務化 全ての地域で地域別最低賃金を決定しなければならないとされた。
2. 生活保護との整合性 地域別最低賃金の決定に際しては、その地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならないとされているが、この内、「労働者の生計費」を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとされた。
3. 地域別最低賃金の不払いへの罰金 地域別最低賃金の不払いに掛かる罰金(1人当たり)の上限が2万円から50万円に引き上げられた。
4. 産業別最低賃金(改正により「特定最低賃金」となる。) 産業別最低賃金は例外扱いとなり、関係労使の申出により決定することがあるとされた。また、地域別最低賃金と異なり、特定最低賃金の不払いに対しては罰則の適用はない。
5. 派遣労働者に対する最低賃金 派遣労働者に適用する最低賃金は、派遣先事業所所在地の地域別最低賃金を適用するとされた。
【労働契約法の制定】(新法)
労働契約法は、先ほどの最低賃金法とは異なり新法です。
なぜ、労働契約法という新法を制定しなければならなかったかというと、近年の社会情勢の変化が大きく影響しています。
すなわち、
・長期継続雇用・年功序列賃金から成果主義・能力主義への転換
・中途採用の増加等採用方法の多様化
・非正規雇用労働者(パート、派遣等)の増加
・労働者の就業意識の変化 等
により労働、社会情勢が複雑化しています。
これにともない企業と労働者間の争い(「個別労働紛争」といいます。)が増加しており、具体的には、@解雇、A賃金不払い、B(労働者に不利な内容への)労働条件の変更、Cいじめ、セクハラ等の相談、個別労働紛争解決制度の利用が増加しています。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/h0525-1.html(H18年度の全国のデータ)
http://www.e-roudou.go.jp/tokei/900/index.htm(H18年度の愛媛県のデータ)
平成18年度、全国約300箇所の総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は946,012件(4.2%増)、内民事上の個別労働紛争に係る相談は187,387件(6.2%増)でした。
にもかかわらず、これまで労働契約のルールを定めた法律が存在しなかったために、個別労働紛争が生じた場合の解決は過去の裁判の判例を適用して行なってきた経緯があります。
しかし、裁判では、あくまでも個別の事情を考慮して判断されるものであるため、別の事案でも同じ判断となるかどうかは不明確な点がありました。
そこで、労働契約上のトラブルを解決するためのルールとして労働契約法が制定されることとなったわけです。
【主な内容】
・労働契約の成立
・労働契約の内容と就業規則との関係
・労働契約の内容の変更
・就業規則による労働契約の内容の変更
・就業規則の変更に係る手続き
・就業規則違反の労働契約
・出向
・懲戒
・解雇
・有期労働契約 等
内容的には当初、2005年9月に「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が発表した報告書の内容と比べると簡素で数段後退した内容になっているといわれています。
なお、今回同時に審議されていた月80時間を超える残業に対する賃金割増率を現行の25%から50%に引き上げる労働基準法改正案は、与野党の主張が対立しており、今国会(第168回国会)での成立は困難な情勢となっています。
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