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平成24年4月号 インデックス

差別のない公正な採用選考を行うために
〜厚労省HPに「採用選考チェックリスト」
編集後記

差別のない公正な採用選考を行うために
〜厚労省HPに「採用選考チェックリスト」


新卒採用人事担当者のための採用支援サイトである「マイナビ採用サポネット」が実施した「2013年卒新卒採用予定調査」結果によると、採用予定数を「減らす」と回答した企業は3年連続で減少しており、緩やかに回復しているそうです。
しかし、採用選考における評価基準は前年並みとする企業が多く(81.7%の企業が前年並みと回答)、質と量で見た場合、ある程度の量は確保したいものの、一定レベルの質は確保するという、どちらかというと質重視の傾向が続いていると分析しています。

2013年卒の新卒者から、採用スケジュールが変更され、10月から12月スタートになっており、この2か月の遅れによって内定を出す時期も後ろにずれるのではないかと言われています。
しかし、多くの企業で今が採用選考の真っただ中という状況であることに変わりはないと思います。

そこで今月は厚生労働省がHPで公開している公正な採用選考のための基本的な方針、及び公正な採用選考を行うためのチェックポイントについてご案内したいと思います。
これは、「就職の機会均等を確保するために、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するよう」雇い主となる企業に対しての啓発活動の一環として作成されたものであり、企業側にとっても、優秀な人材確保のためには、これらを遵守していく必要があります。

http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo.htm
(厚生労働省 採用のためのチェックポイント)


もちろん、毎年の定期的な新卒採用スタイルをとっていない企業もあると思いますが、今月ご案内するチェックポイント等は、新卒採用だけに限った話ではなく、採用選考一般に当てはまるものです。
その意味でも、どういった点が公正な採用選考に当たらない行為とされるのか、を知っておくことは有意義ですのでご確認いただければ幸いです。


I.公正な採用選考について

採用選考にあたっては、次の2点を基本的な考え方として実施すべきとされています。
・応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力のみを基準として行うこと

このうち後者を言い換えると、応募者の適性・能力とは関係のない事柄(家族状況や生活環境等)によって採否を決定しないということであり、そのためには、適性・能力に関係のない事項について応募用紙に記入させない、面接で質問しないといったことが重要になります。
*これらに事項は採用基準としないつもりであっても、把握してしまうと結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがある。

次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
<a.本人に責任のない事項の把握>
本籍・出生地に関すること
(注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
生活環境・家庭環境などに関すること
 
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
宗教に関すること
支持政党に関すること
人生観、生活信条に関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合・学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
 
<c.採用選考の方法>
身元調査などの実施
(注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

また、個人情報保護という観点にも注意が必要です。
つまり、職業安定法第5条の4及び平成11年告示第141号によって、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められていないため、これらの個人情報を収集しないようにしなければならないということです。

【職業安定法第5条の4】
(求職者等の個人情報の取扱い)
第五条の四 公共職業安定所等は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
2 公共職業安定所等は、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
(注)ここでいう「公共職業安定所等」には「労働者の募集を行う者」も含まれる。

【職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)】
第4 法第5条の4に関する事項(求職者等の個人情報の取扱い)
1 個人情報の収集、保管及び使用
(1) 職業紹介事業者等は、その業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報(1及び2において単に「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでないこと。
  イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
  ロ 思想及び信条
  ハ 労働組合への加入状況
(2) 職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないこと。
(3) 職業紹介事業者等は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは、職業安定局長の定める書類により提出を求めること。
新規中卒者:「職業相談票(乙)」
新規高卒者:「全国高等学校統一応募書類」
なお、新規大卒者について「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」又は「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」を用い、一般については「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」を用いる。独自に応募用紙やエントリーシートの項目・様式を設定する場合には、適性と能力に関係のない事項を含めないようにする!
(4) 個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること。ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合はこの限りでないこと。
2 個人情報の適正な管理
(1) 職業紹介事業者等は、その保管又は使用に係る個人情報に関し、次の事項に係る措置を講ずるとともに、求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないこと。
イ 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置
ロ 個人情報の紛失、破壊、改ざんを防止するための措置
ハ 正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置
ニ 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置
(2) 職業紹介事業者等が、求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないこと。なお、有料職業紹介事業者は特に厳重な管理を行わなければならないこと。
(3) 職業紹介事業者及び労働者供給事業者は、次に掲げる事項を含む個人情報の適正管理に関する規程を作成し、これを遵守しなければならないこと。
イ 個人情報を取り扱うことができる者の範囲に関する事項
ロ 個人情報を取り扱う者に対する研修等教育訓練に関する事項
ハ 本人から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。以下同じ。)の取扱いに関する事項
ニ 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する事項
(4) 職業紹介事業者及び労働者供給事業者は、本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。
3 個人情報の保護に関する法律の遵守等
  1及び2に定めるもののほか、職業紹介事業者等は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項に規定する個人情報取扱事業者(以下「個人情報取扱事業者」という。)に該当する場合には、同法第4章第1節に規定する義務を遵守しなければならないこと。また、個人情報取扱事業者に該当しない場合であっても、個人情報取扱事業者に準じて、個人情報の適正な取扱いの確保に努めること。
(注)本告示中、「職業紹介事業者等」には「労働者の募集を行う者」を含むため、労働者を採用しようとする場合には、職業紹介事業者等に対する項目に留意する必要がある。

なお、「面接」に際しては、あらかじめ質問項目や評価基準を決定しておき、適性と能力に関係のない事項を尋ねないように留意する必要があります。

それでは、貴社の採用選考の状況がこれらの基準を満たしているかどうか、以下のチェックポイントで確認してみましょう。


II.公正な採用選考チェックポイント

以上を踏まえ、以下のチェックリストを活用して、自社の採用選考が公正なものといえるかどうかをチェックしてみましょう。
1. 高卒予定者用の応募用紙は、全国高等学校統一応募用紙のみとしているか?
新規中卒者は「職業相談票(乙)」、新規高卒者は「全国高等学校統一応募書類」を用いることとされていますので、これらを使用する必要があります。
なお、新規大卒者について「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」又は「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」を用い、一般については「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」を用い、独自に応募用紙やエントリーシートの項目・様式を設定する場合には、適性と能力に関係のない事項を含めないようにすることが必要です。
2. 応募用紙(エントリーシートを含む)に、本籍の記入欄を設けてないか?
本籍や出生地を記入させることは、本人に責任のない事項を把握することになり、採否の決定に影響すると考えられるため記入欄を設けないようにする必要があります。また、面接時においてもこれらに関する質問をしないようにしなければなりません。
3. 応募用紙(エントリーシートを含む)に、家族構成・家族の職業の記入欄を設けてないか?
家族構成や家族の職業についても、本人に責任のない事項であり、2.の「本籍」と同様、記入欄を設けたり、面接時に質問するなどしないようにしなければなりません。
4. 応募者から戸籍謄(抄)本・住民票の写しを提出させていないか?
2.3.と同様の趣旨であり、これらを提出させてはなりません。なお、ここでいう住民票は"本籍が記載された"住民票のことですので本籍が記載されていなければ問題なし、という解釈をする方がいらっしゃるかもしれません。 しかし、採用時には可能な限り「住民票記載事項証明書」によることとする厚生労働省の通達もありますので、住民票記載事項証明書の提出を求めるようにした方がベターといえます。
戸籍謄(抄)本及び住民票の写しは、画一的に提出又は提示を求めないようにし、それが必要となった時点(例えば、冠婚葬祭等に際して慶弔金等が支給されるような場合で、その事実の確認を要するとき等)で、その具体的必要性に応じ、本人に対し、その使用目的を十分に説明の上提示を求め、確認後速やかに本人に返却するよう指導すること。
就業規則等において、一般的に、採用時、慶弔金等の支給時等に戸籍本(抄)本、住民票の写し等の提出を求める旨を規定している事例があるが、上記の趣旨に則り、これらについても、可能な限り「住民票記載事項の証明書」により処理することとするよう、その変更について指導すること。
(S 50/2/17基発83号、婦発40号、S 63/3/14基発150号、H 11/3/31基発168号)
5. 応募者に現住所の略図を書かせていないか?
現住所の略図を書かせることは、生活環境などの把握や身元調査につながる可能性があるため採用選考の方法として問題があります。
また、生活環境、家庭環境などに関することは本人に責任のない事項です。
6. 応募者から、一律に健康診断書を提出させていないか?
一律に健康診断書を提出させるのは問題といえます。
応募者の適性と能力を判断する上で必要か、検査項目が求人職種の職務を適切に遂行するために必要な項目かという観点で検討した上で、必要であるならば健康診断書を提出させることは可能ですが、一律に提出させることは、適性と能力とは関係のない事柄で採否を決定することにもつながりかねないため公正な採用選考の方法とはいえません。
また、個人情報の中でも健康状態に関する情報は、インセンティブ情報にあたり極めて保護の度合いが高い項目ですので、その把握にはより慎重さが要求されます。
7. 学科試験を行う場合、職務遂行に必要な適性・能力をもっているかどうかを判断するための内容としているか?
このためにも、あらかじめ評価基準を決定しておくことが有効です。
8. 作文を行う場合、「私の生い立ち」や「私の家庭」等の本人の家庭環境や本人の思想・信条を確認するテーマとしているか?
家庭環境や思想・信条の把握につながるテーマを設けないように注意が必要です。
9. 適性検査を行う場合、専門的知識のある人が実施するようにし、結果を絶対視したりうのみにすることはないか?
個人の基本的人権を尊重するためにも、適性検査の結果だけで判断することは避けるべきでしょう。
10. 面接の実施に先だって、職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めているか?
本籍・出生地に関することや家族に関すること等の本人に責任のない事項や、思想信条にかかわる事項の把握につながる質問をすることを防ぐためにも、あらかじめ質問項目を決定しておくことは重要です。 また、適性・能力を公平に評価するため、評価基準を定めておくことも公正な採用選考につながります。
11. 面接において、本人が生まれたところや家族構成・家族の職業などを尋ねることがあるか?
これらは、本人に責任のない事項の把握につながる可能性があるため、質問項目としないように10.のようにあらかじめ質問項目を決定しておくことが重要です。
12. 面接において、人生観・生活信条・尊敬する人・愛読書などを尋ねることがあるか?
11.と同趣旨で、質問項目としないようにする必要があります。
13. 面接は、応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨んでいるか?
採用選考にあたっての基本的なスタンス、心構えです。応募者のもつ適性・能力が求人職種の職務を遂行できるかどうかを基準として採用選考を行わなければなりません。
14. 面接は、応募者に対するできるだけ客観的かつ公平な評価を行うようにしているか?
客観的かつ公平な評価を行うためにも、あらかじめ質問項目や評価基準を決定しておくことが必要です。
15. 家庭状況等の身元調査を実施していないか?
本人に責任のない事項の把握となりますので、家庭状況等の身元調査は実施してはいけません。
16. 内定者から、戸籍謄(抄)本等を一律に提出させていないか?
4.で挙げた厚生労働省の通達にもあるように一律に提出させることは控えなければなりません。ただし、前述の平成11年告示第141号第4にあるように「特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合」であれば許されるといえます。なお、この場合でも、4.の通達前段にあるように、確認後は速やかに本人に返却する必要があります。

公正な採用選考チェックポイント

以上、公正な採用選考のために厚生労働省がホームページに掲載している内容を基にしてご案内いたしました。
昨今は、従来に比べ、人権への配慮の要請も高まってきており、これらの基準を理解したうえで採用活動を行うことは不可欠です。
ついつい、両親のことや、愛読書、尊敬する歴史上の人物について質問してしまうこともありえますので、採用担当者や役職者はこれらの事項について理解した上で面接に望む必要があります。
応募者のサイドで、これらの基準に対する配慮がある企業か、どうかでその企業を値踏みしているかもしれません。
いい人材確保のためにも、これらの基準は押えておきたいですね。

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編集後記


大学生の採用状況は、マスコミを通じて頻繁に報じられます。
その就職内定率は、ある意味で景気のバロメーター的な意味あいで用いられることが多く、また、自分たちの子どものときはどうなるのだろう?というような身近な興味関心を寄せられてる事項ではないでしょうか?
今回とりあげた「公正な採用選考チェックポイント」は、かなり以前からあるものですが、企業規模によって、周知度合いにかなりの差があると感じます。
学生が企業を訪問した際、学生の側でも、その企業の受付時の対応や採用担当者の対応を評価しています。企業側も評価されているわけであり、その基準の一つに、今回の取り上げたテーマに関することがないとも限りません。

その意味で、企業としては、今回ご案内した基準をしっかりと把握し、これに基づいた対応をとっていくことが重要でしょう。
採用担当者だけでなく、その上の役職にあたる方々にも周知しておく必要があると思います。
意外なことに(というか、多くの企業で)、ビジネスマナー等ができていないのはある程度以上の役職者の方が多いという現実があります。
このあたりまできっちりと周知できている企業は流石ですね。

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